場面場面で力が入りすぎている感じもありますが、頭から尻まで非の打ち所が無く圧倒的な熱情のまま50分が経過します。
仕事しながらとか、洗濯しながらとか、所謂“ナガラ”では聴けないものがあります。一度再生スイッチを押してしまうと突如音塊に浚われ、ジャバラの溝から這い上がれなくなるのです。
それがキップ・ハンラハン プロデュース、ピアソラ生涯渾身の作品です。
地表に腹を擦ることになろうが、天に昇り着き我を失おうが、生涯変わらぬ確信、ただ何らかの形で音と戯(たわむ)れる、ただそれだけの繰り返し。